顧問先の記帳をAIに任せるとき、着手してから戻ることになる箇所は、だいたい決まっています。ここに挙げる5つは、弊社が顧問先の記帳支援で実際にぶつかって直したところです。

会計ソフトへの取り込み手順は載せていません。開始残高の入れ方も、仕訳CSVの列の並びも、freeeと弥生の公式ヘルプに手順とサンプルファイルがあります(freee ヘルプセンター「その他の会計ソフトから開始残高を移行する」2026年3月18日更新)。公式に書いてあることを並べ直しても、先生方の手間は減りません。ここに書くのは、公式に書かれていない「どこまで機械に任せるか」の判断だけにしました。

証憑に書いてあることだけが機械で読める

全部をAIに任せる作りにすると、証憑から判断できないことまで機械が決めることになります。着手の前に、2種類に分けてください。

  • 証憑の面に出ていること -- 日付・金額・取引先・品目。これは読み取って判定できます
  • 証憑に書いていないこと -- たとえば飲食の費用を1人あたりの金額で2つの科目に分けている事務所の場合、参加人数がレシートに書かれていなければ、合計金額は読めても割る数が分かりません

この場合は、金額での絞り込みまでを機械が行い、該当する候補だけを人の確認に上げます。全件を目で見る運用から、判断が要るものだけを見る運用に変わります。何件が確認に上がるかは、事務所の科目の分け方と証憑の中身で変わります。ゼロにはなりません。

複数行の伝票は行の役割を先に教える

クレジットカードの引き落としのように、1枚の伝票に明細が10件以上並ぶことがあります。弥生の形式では、1行目・途中の行・最終行を識別フラグの値で区別します(弊社が受領した、取り込み実績のあるファイルで確認)。設計の前に、複数行の伝票が月に何件あるかを数えておいてください。

スキャンの解像度を上げても読み取り費用は増えない

Claudeに画像を読ませる費用は、画像を縦横28画素ごとのマスに区切ったマスの数で決まります。ただしモデルごとに上限があり、上限を超える画像は縮小してから読まれます。

A4の解像度画素数マスの数読まれ方
150dpi1,240 × 1,7542,835縮小されない
200dpi1,654 × 2,3395,040上限を超えるため、縮小してから読む
300dpi2,480 × 3,50811,214同上
400dpi3,307 × 4,67719,992同上

上限は長辺2,576画素・4,784マス(Claude 4.7以降のモデル)。それより前のモデルは長辺1,568画素・1,568マスで、さらに小さく縮小されます。画素数はA4(210×297mm)から計算した値で、実測ではありません。出典: Claude Docs「Vision」Resolution and token cost(2026年10月11日確認)。

つまりA4なら、200dpi以上はどれも同じ上限まで縮小されてから読まれます。解像度を上げても費用は増えず、そのかわり縮小で細かい字が読みにくくなることがあります。解像度は費用ではなく「縮小されても字が読めるか」で決めてください。実物を数枚読ませるのが早いです。なお、書類の保存に求められる解像度は、これとは別に確認が要ります。

第1版の訂正
本ガイドの第1版では「解像度を2倍にすると、読み取り費用はおおむね4倍」と書いていました。縮小を計算に入れていなかったためで、Claudeでは当てはまりません。ほかのAIサービスや読み取りサービスは課金の単位が違うため、それぞれの料金表で確かめてください。

顧問先のデータを入れる前に学習設定を確かめる

顧問先の証憑をAIに読ませる以上、その内容が学習に使われるかどうかは、着手の前に確認して記録に残すことです。

AnthropicのClaudeの個人向けプラン(Free・Pro・Max)では、学習に使ってよいかをアカウントのプライバシー設定で切り替えられます。この選択で、データの保持期間が変わります。

学習利用の設定データの保持期間
学習に使うことを許可する最長5年
許可しない30日
  • 同じアカウントからClaude Codeを使う場合も、この設定が適用されます
  • 設定は新しく始めた会話、または再開した会話に適用されます
  • 利用ポリシーに違反すると自動で判定された会話は、入力と出力が最長2年、判定の記録が最長7年。送ったフィードバックは5年です

出典: Anthropic「Updates to Consumer Terms and Privacy Policy」、Anthropic Privacy Center「How long do you store my data?」(2026年10月11日確認)。

法人向けプランとAPIは、この表の対象外です。Claude for Workなどの法人向けサービスとAPIの利用は、別の規約(Commercial Terms)で扱われます。ご契約のプランの規約で、着手の前に確認してください。顧問先への説明が必要になる場面もありますので、確認した日付と内容を記録に残すことをおすすめします。

学習に使われないことと、データが外部に送られないことは別の話です。設定を切っても、入力した内容はサービス提供元のサーバーへ送信されます。どの顧問先のどの証憑を対象にするかは、事務所の取り扱いの決まりとあわせて決めてください。

自動登録ルールにしてよいのは毎回同じ答えになる取引だけ

会計ソフトの自動登録ルールは、条件に合う明細を人が見ないまま登録します。判断が要る取引をルールにすると、誤りも人が見ないまま登録されます。

取引ルールにするか理由
電子マネーへのチャージしてよい毎回お金の移動で、判断の余地がない
駅名と金額が決まった通勤してよい駅名と金額で決まる
通信・水道光熱・家賃してよい相手先で決まる
会食しない相手先を記録できたかどうかで、使う科目が変わる
消耗品・雑費しない中身を見ないと決まらない
弊社の記帳で起きたこと
2026年9月2日に会食のルールを作ったところ、翌日、古い内容の備考のまま1件が自動で登録されました。相手先の名前が分かる月と分からない月で書く内容が変わるのに、ルールは同じ内容を書き続けていました。

会計ソフトを触る前にほかに作業している人がいないか確かめる

顧問先の会計ソフトには、顧問先の社員、以前の担当者、別の専門家など、複数の人が入っていることがあります。知らずにルールや設定を変えると、ほかの人が直したばかりの設定を上書きすることになります。

  • メンバーの一覧で、誰がどの権限で入っているかを見る
  • 自動登録ルールなどの設定を、誰がいつ更新したかが分かる場所があれば、そこも見る
  • 数日空けて作業に戻ったときも、同じ2点を見直す(その間に設定が変わっていることがあります)
  • 分担を確かめるまで、ルールや設定を変えない

ほかの作業者が見つかったら、どこを誰が担当するかを顧問先に確かめてから手を入れてください。点検の記録には、点検した日の件数と、その設定を最後に更新した人を残しておくと、後から前提の違いに気づけます。

事務所ごとに変わるところは30分で一緒に決めます

ここまでの5つは、どの事務所でも先に決めておけるものです。残りは、お使いの会計ソフトと事務所の決まりで変わります。

  • いま使っている会計ソフトから、何をどの形式で出せるか
  • 税込で入れるか、税抜処理なら税金額の欄をどう埋めるか
  • 摘要の文字数の上限(弥生は製品ごとに違います)

この3つと着手前チェックリストは、記帳AI実務ガイドに入れています(無料・フォーム入力後すぐダウンロード)。

顧問先の証憑を見ながら決めたい場合は、無料30分相談をご利用ください。口頭でお伝えします。書面のレポートは含みません。その場での売り込みはしません。

弥生会計に取り込むCSVの作り方はClaudeで弥生会計の仕訳CSVを作る方法と注意点、経理全体の進め方は経理・仕訳をAIで自動化する方法にまとめています。